
ひとことで言えば、液晶ディスプレイとプログラムモードを持っているかどうか。ここが分かれ目です。


- ECAM35035Wは6つの抽出メニューを液晶で選び、量と濃さをボタンごとに登録できる全自動マシンです。
- 本体は幅240×奥行き445×高さ360mm、質量約9.5kg。水タンク1.8L、豆ホッパー300g、ポンプ圧15気圧。
- ミルクは手動のフロッサー式。ボタンひとつでカプチーノが完成するタイプではありません。
- お手入れは1日の終わり・1カ月に1回・必要なときの3段階。石灰の除去は約45分で、途中中断ができません。
30秒でわかる。ECAM35035Wが向いている人と、向かない人
結論から置きます。この機種は「出てくる量と濃さを自分で決めたい人」のための全自動です。逆に、ミルクメニューまで機械に任せたい人には合いません。
| 向いている人 | 向かない人 |
|---|---|
| マグカップで飲みたい。既定量では足りない | ボタンひとつでカプチーノを完成させたい |
| 朝と夜で濃さを変えたい | ミルクタンクを本体に挿す方式を探している |
| よく飲む1杯を登録して固定したい | 2人分を一度にまとめて出したい |
| エスプレッソ以外の淹れ方も試したい | 設定を一切いじりたくない |
右の列に自分が当てはまるなら、上位機のECAM35055Bを見たほうが早いです。ミルクの自動化はそちらの担当で、ECAM35035Wは担当外。ここを取り違えると、届いてから「思っていたのと違う」になります。
仕様表で見るECAM35035Wの基本性能
取扱説明書p.33の仕様表から、判断に効く数字だけを抜き出しました。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 外形寸法(約) | 幅240×奥行き445×高さ360mm |
| 質量(約) | 9.5kg |
| 水タンク容量 | 1.8L(MAXの目盛り) |
| 豆ホッパー容量 | 300g |
| カス受け容量 | 最大20杯分 |
| ポンプ圧 | 15気圧 |
| グラインダー | コーン式コーヒーグラインダー |
| 消費電力 | 1450W(待機電力は約0.3W) |
| コーヒー粉の使用 | 使用可(最大量:計量スプーン山盛り1杯) |
| 付属品 | 計量スプーン、コーヒーマシン用除石灰剤、水硬度チェッカー、クリーニングブラシ |
幅240mmという数字が、この機種の性格をよく表しています。全自動としては細身の部類。ただし奥行きが445mmあるので、置き場所で効いてくるのは横幅より前後の余裕のほうです。水タンクは手前に引き出して取り外す方式(p.7)なので、前方向の空きも要ります。
豆ホッパー300gは、一般的な200gの豆袋を1袋開けても入りきる容量です。ただし説明書p.13は「適量の豆で抽出するために、目安量より多めにコーヒー豆を入れてください」と書いています。底が見えるまで使い切る運用は、想定されていません。

実力の中心は6つのメニュー。初期値と設定範囲の全一覧
この機種を語るうえで、いちばん中身のある部分がここです。コントロールパネル(p.8)には専用ボタンが4つ並び、さらにドリンクメニューボタンから2種類を呼び出せます。合わせて6つ。
| メニュー | 1杯抽出の初期設定 | 設定範囲 |
|---|---|---|
| エスプレッソ | 約30mL | 約30〜180mL |
| スペシャルティ | 約180mL | 約100〜240mL |
| カフェ・ジャポーネ | 約180mL | 約115〜250mL |
| ドッピオ+ | 約120mL | 約80〜180mL |
| エスプレッソLARGE | 約40mL | 約40〜180mL |
| ロングコーヒー | 約120mL | 約100〜180mL |
数字より大事なのは、抽出の中身がメニューごとに違うことです。説明書p.14の説明を要約します。
- カフェ・ジャポーネ。給湯と蒸らしを繰り返す間欠抽出を2回行います。ハンドドリップで湯を注いでは待つ、あの動作を機械がやる方式。
- スペシャルティ。通常より多めに豆を挽き、蒸らさずダイレクトに抽出します。
- ドッピオ+。多めに挽いた粉に十分な蒸らしを加え、さらに高めの圧力で抽出します。
同じ「量が多いコーヒー」でも、蒸らすか蒸らさないか、圧力を上げるか上げないかで別物になる。ボタンが6つあるというのは、そういう意味です。
量の変更は、数値入力ではなく「止めたところで決まる」
設定はプログラムモードの「メニューセッテイ」から入ります(p.15)。特徴は、数字を打ち込むのではなく、実際に抽出しながら好みの量になったところでOKボタンを押す方式であること。目分量がそのまま設定値として保存されます。
カフェ・ジャポーネについては注意点が1つあり、120mL以下に設定すると間欠抽出が2回から1回に減ります(p.14)。量を絞るだけのつもりが、抽出方式まで変わってしまう。カフェ・ジャポーネの抽出量を115〜250mLの範囲で設定する手順と、120mLの壁の詳細はこちらにまとめました。
2杯抽出には制限がある
エスプレッソ、エスプレッソLARGE、ロングコーヒーは2杯抽出に対応します。一方でスペシャルティ、カフェ・ジャポーネ、ドッピオ+は1杯抽出のみ(p.13・p.14)。来客時にカフェ・ジャポーネを2人分となると、2回に分けて淹れることになります。
よく飲む1杯はマイメニューに登録できる
マイメニューボタンには、マイエスプレッソ、マイスペシャルティ、マイカフェ・ジャポーネ、マイドッピオ+、マイエスプレッソLARGE、マイロングコーヒーの6種類を登録できます(p.15)。抽出ボタン側を普段の量にしておき、マイメニュー側に別の量を入れておく、という二段構えが可能です。

味を決めるのは、豆量5段階とグラインダーノブ
抽出量と濃さは、別々のボタンで動きます。連動していません。
豆量調整ボタンで5段階
豆量調整ボタンを押すたびに、EXマイルド、マイルド、スタンダード、ストロング、EXストロングの順に切り替わります(p.13)。豆から挽くときは、これに加えて「コーヒーパウダー」という選択肢も出てきますが、こちらは市販の粉を使うときのモードです。
初期設定はスタンダード。ただしドッピオ+だけは固定で、変更できません。
説明書p.13に見落としやすい注記があります。豆量調整ボタンで選んだ濃さは保存されません。次の抽出では初期設定に戻ります。毎回同じ濃さで飲みたいなら、その濃さごと定量設定(p.15)で登録してしまうのが正解です。
グラインダーノブは「困ったときだけ」触る
本体天面のグラインダーノブで、豆の挽き具合を変えられます(p.7・p.11)。ただし説明書の指示は明快で、通常はお買い上げ時の設定「5」のまま使う。回してよいのは次の2つの場合だけです。
- コーヒーが抽出されない、または抽出が極端に遅い。粗いほう(時計回り)に1目盛
- コーヒーが薄い、もっとクリーミーにしたい。細かいほう(反時計回り)に1目盛
守るべき条件が2つあります。グラインダーノブは豆が挽かれているときだけ回すこと。そして1度に1目盛以上回さないこと。どちらも故障の原因として明記されています。調整後は2杯以上抽出しないと効果が出ない、とも書かれています。1杯飲んで「変わらない」と判断して、また回す。これがいちばんやってはいけない使い方です。
使い方の流れ。電源を入れると自動で内部洗浄が始まる
初めて使うときは、空気抜きと水硬度の設定の2つが必要です(p.9・p.10)。どちらも省略できません。水硬度は付属の水硬度チェッカーで測ってから設定する仕組みで、ここを合わせておくと石灰除去のお知らせが自分の水道水に合った頻度で出るようになります。
日常の流れは単純です。
- 水タンクにMAXまで水を入れ、豆ホッパーに豆を入れる(p.13)
- 電源を入れる。「ヨネツチュウ シバラクオマチクダサイ」「ナイブセンジョウ」と表示され、自動で内部洗浄が走る(p.11)
- カップを置き、抽出口を下げてカップに近づける。抽出口をカップの壁面に近づけるほどクリーミーになる(p.14)
- 豆量調整ボタンで濃さを選び、抽出ボタンを押す
初回の空気抜きと水硬度の設定は、押すボタンと液晶の表示まで含めると手順が長くなります。1つずつ確認しながら進めたい方は、ディナミカの使い方。初回の空気抜きから1杯目までの全手順にまとめてあります。
電源を切るときも自動で内部洗浄が入ります。注意したいのは、本体背面の主電源スイッチを先に切らないこと。前面の電源ボタンで「デンゲン OFF シバラクオマチクダサイ」の表示が消えてから、主電源を切ります(p.11)。
2日以上使わなかった場合は、手動内部洗浄を2〜3回行うことが推奨されています(p.11)。プログラムモードの「ナイブセンジョウ」から実行できます。しばらく空けた朝は、1杯目の前にここを通しておくのが説明書どおりの使い方です。
お手入れは3段階に分かれている
全自動マシンを選ぶときに、いちばん軽く見られがちで、いちばん後から効いてくる部分です。ECAM35035Wのお手入れは頻度で3つに分かれます(p.24)。
| 頻度 | 対象 | 説明書 |
|---|---|---|
| 1日の終わりに | カス受け、カップ受け、トレイ、抽出口、本体内部、水タンク、スチーム管 | p.25・p.26 |
| 1カ月に1回 | 抽出ユニット(水洗い・乾燥)、豆ホッパー、パウダー投入口 | p.27 |
| 必要なときに | 石灰の除去、手動内部洗浄 | p.28・p.29 |
抽出ユニットは自分で外して洗う
抽出ユニットふたを開け、赤いボタン2箇所をつまみながら手前に引くと外れます(p.7・p.27)。上部を流水で洗い、乾かしてから戻す。ここで禁止事項が3つあります。洗剤を使わない、食器洗い機で洗わない、水に浸けたままにしない。いずれも故障の原因と明記されています。
取り外せるのは電源が「切」のときだけです(p.27)。電源が入ったまま外そうとして「外れない」と感じるのは、故障ではなく仕様です。
もう1点。銀色のフィルター部分を指で押し込んだときの伸縮動作が固くなってきたら、抽出ユニット用グリースを塗る必要があります(p.27)。このグリースと交換用の抽出ユニットは、販売店またはデロンギのオンラインショップで扱う部品です(p.33)。
石灰の除去は約45分。途中で止められない
液晶に「ジョセッカイ」と表示されたら、除石灰剤を使った石灰の除去を行います(p.28)。所要時間は45分程度で、作業は中断できません。準備・洗浄・すすぎの3段階に分かれ、1.8L以上の空の容器が必要になります。
コーヒーマシン用除石灰剤は本体に付属しています(p.33)。ただし石灰の除去は使い続ける限り繰り返し発生するので、いずれ消耗品として買い足す前提です。この機種を検討する時点で、月々のコーヒー代とは別に消耗品の予算が要ると考えておいてください。
45分の中身は、準備・洗浄・すすぎと表示が切り替わっていく流れです。実際の手順はディナミカの除石灰のやり方と除石灰剤の入れ方に、液晶の表示と対応させた表でまとめてあります。

液晶のカタカナ表示が、そのままトラブル対応表になる
ここがランプ式の機種との決定的な差です。ECAM35035Wは、何が起きているかを液晶が文字で言ってきます(p.30)。代表的なものを挙げます。
| 表示 | 意味と対処 |
|---|---|
| ミズタンクニ ミズヲ イレル | 水タンクの水が不足。水を入れて本体にしっかり取り付ける |
| カスウケヲ カラニスル | カス受けが満杯。満杯に見えなくても、表示が出たら必ず捨てる |
| マメリュウド エラー | 挽き具合が細かすぎて抽出が遅い。グラインダーノブを時計回りに1目盛 |
| クウキヌキガヒツヨウデス | 水経路に空気が入っている。給湯ボタンを押して給湯する |
| ジョセッカイ | 石灰の除去が必要。約45分。あとで行う場合はキャンセルできるが、済むまで表示は残る |
| エラー!セツメイショヲカクニン | 主電源を切って約5秒後に入れ直す。次に抽出ユニットを取り付け直す。それでも直らなければ相談窓口へ |
「赤いランプが点滅している。これは何番のエラーだ」と調べる時間が要りません。日本語のカタカナで、対処が要る場所を名指ししてくる。全自動マシンを初めて持つ人ほど、この差は効いてきます。
「ぬるい」は故障ではないことが多い
説明書p.31に、先回りした説明が置かれています。エスプレッソの温度は67〜70℃前後が理想とされており、一般的なドリップコーヒー(85℃前後)と比べてぬるく感じることがあるが異常ではない、と。
そのうえで対処が3つ挙げられています。給湯機能でカップを湯煎する、手動内部洗浄で本体内部を温める、抽出温度の設定を上げる。抽出温度は4段階から選べて、初期設定はレベル2(p.19)。レベル3やレベル4へ上げる余地が最初から残されています。
後悔しやすいのはミルクまわり。買う前に知っておきたい3点
良いところだけ並べても判断材料になりません。この機種で期待とずれやすいポイントを3つ挙げます。
1. ミルクは手動のフロッサー式
カプチーノの作り方は、ミルクジャグに冷えた牛乳を入れ、フロス調整つまみをCAPPUCCINO側にし、フロッサーを外側に出してスチームで泡立てる、という流れです(p.17)。牛乳を入れるタンクを本体に挿す方式ではありません。
泡立てたあとはフロッサーとスチームノズルのお手入れが毎回必要です(p.18)。ミルクメニューを毎日飲む人にとって、ここは軽い手間ではありません。ミルクの自動化を求めるなら、検討先はECAM35055Bになります。
2. 2杯抽出できないメニューがある
前述のとおり、スペシャルティ・カフェ・ジャポーネ・ドッピオ+は1杯抽出のみ。夫婦で毎朝カフェ・ジャポーネ、という使い方だと毎回2回運転することになります。
3. ウォーターフィルターの設定メニューが無い
デロンギのウォーターフィルターDLSC002はECAM35035Wでも使用できます。ただしデロンギ公式FAQによれば、ECAM35055B以外のECAMシリーズにはプログラムモードに「ウォーターフィルターの設定」の項目がないため、除石灰のお知らせは従来と同じ頻度で出ます。フィルターを付ければ石灰除去の回数が減る、という期待は、この機種では成立しません。
実際、取扱説明書p.20のプログラムモードのメニュー一覧にフィルター関連の項目はなく、p.33の別売品リストにもウォーターフィルターは入っていません。使えるけれど設定はできない。この差を知らずに買うと、期待していた効果が出ないことになります。
ここまで読んで、それでも合うと思えた人向けに機種情報を置いておきます。
マグニフィカSと迷っているなら、判断軸は3つ
同じデロンギの全自動で、比較されやすいのがマグニフィカSです。操作体系がそもそも別物なので、価格だけを並べても答えは出ません。
| 判断軸 | 見るところ |
|---|---|
| 抽出量を自分で決めるか | ディナミカは6メニューすべてに設定範囲がある。マグニフィカSのカフェ・ジャポーネは約120mL固定 |
| メニューの数 | ディナミカはスペシャルティ、ドッピオ+、マイメニューを持つ |
| 操作の表示方法 | ディナミカは液晶のテキスト表示。マグニフィカSはボタンとランプ |
ディナミカとマグニフィカSの違いを3つに絞り、6万円の価格差を回収できる条件をまとめた記事はこちらです。価格差の中身が何なのかは、そちらで数字を出して整理しています。

デロンギ ディナミカ ECAM35035Wを買う
取り扱いがあるのはAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの3モール。全自動コーヒーマシンは価格が動きやすいカテゴリなので、購入前に3つとも見ておくのが確実です。ポイント還元まで含めると、表示価格がいちばん安いモールが最終的に最安とは限りません。
本体と一緒に考えておきたいのが除石灰剤です。水硬度の設定(p.10)を自宅の水に合わせておくと、必要以上の頻度でお知らせが出ることを避けられます。
まとめ:ディナミカ ECAM35035Wは「6メニューを液晶で使い分ける1台」で解決
- 6つのメニューすべてに設定範囲があり、量と濃さをボタンごとに登録できます。
- 本体は幅240×奥行き445×高さ360mm、9.5kg。奥行きと前方向の余裕を先に測ってください。
- 味の調整は豆量5段階が主役。グラインダーノブは困ったときだけ、1目盛ずつ。
- ミルクは手動のフロッサー式。自動化を求めるならECAM35055Bが検討先です。
- 液晶がカタカナで状態を出すので、トラブルの原因を推測する場面が少なくて済みます。
この機種を一言でまとめるなら、既製品としてのコーヒーを買うのではなく、自分の1杯を設定として保存していく機械です。届いた日に完成せず、使いながら数値が固まっていく。その過程を面倒だと感じる人には向きませんし、楽しいと感じる人にはこれ以上ない相棒になります。
まず設定するなら、カフェ・ジャポーネの抽出量から。初期値の180mLは中途半端に感じる人が多い部分です。115〜250mLの範囲で自分のカップに合わせる手順は、こちらで全ステップを解説しています。
