



決定版!サイフォンコーヒーの豆の選び方|焙煎・挽き方・鮮度の基準
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【Project 369】
サイフォンは、フラスコ内の沸騰したお湯がロートに上がり、粉全体をお湯に浸してじっくり成分を引き出す「浸漬法(しんしほう)」という抽出スタイルをとります。しかも、抽出温度は90℃〜95℃近くと、ハンドドリップ(85℃〜90℃)に比べてかなり高温です。
この「高温」×「浸漬」という特性を理解することが、美味しい豆を選ぶための第一歩。まずは、味の土台を決める「焙煎度」「挽き目」「鮮度」などの基本スペックから、失敗しない選び方を解説していきます。
【焙煎度】基本は「中煎り~中深煎り」が最も失敗しない
結論から言うと、サイフォン初心者が最初に選ぶべき焙煎度は「中煎り(ハイロースト)」から「中深煎り(シティロースト)」です。
なぜなら、サイフォンは構造上、どうしても熱湯に近い高温で抽出することになります。コーヒーの苦味成分や雑味は高温であるほど溶け出しやすいため、ハンドドリップで美味しく飲めていた「深煎り(フレンチロースト)」などをそのまま使うと、ガツンとした焦げ感や強烈な苦味が出てしまいがちなのです。
- 浅煎り(ミディアム〜ハイ): 香りが華やかに出るが、酸味が鋭くなりやすい。上級者向け。
- 中煎り〜中深煎り(ハイ〜シティ): 甘み・酸味・苦味のバランスが崩れにくく、サイフォンのクリアな特徴とベストマッチ。
- 深煎り(フルシティ〜フレンチ): 高温抽出で苦味や渋みが過剰に出やすい。アイスコーヒー用ならアリ。
特に「中深煎り」は、サイフォンの特徴である「まろやかな口当たり」と非常に相性が良く、誰が淹れても喫茶店のようなバランスの良いコクを楽しめます。「酸っぱいのも、苦すぎるのも嫌だ」という方は、迷わずパッケージの「中深煎り(City Roast)」を選んでみてください。
【挽き方】粒度は「中挽き」を基準に調整しよう
豆の「挽き目(粒度)」も、味を左右する重要なパラメータです。サイフォンにおける黄金比は、ずばり「中挽き」です。
イメージとしては、グラニュー糖とザラメの中間くらいの大きさ。ペーパードリップ用(中細挽き)よりも、ほんの少しだけ粗めにするのがセオリーです。
「細挽き」にしてしまうと、布フィルター(またはペーパーフィルター)の目が詰まりやすくなります。すると、抽出後のコーヒーが下に落ちてくるのに時間がかかり、お湯に浸かっている時間が長引いてしまいます。これを「過抽出」と呼び、エグみや渋みの原因になります。逆に「粗挽き」すぎると、短い抽出時間では成分が出きらず、お湯っぽい薄い味になってしまいます。
お店で豆を挽いてもらう場合は、「サイフォン用でお願いします」と伝えるのが確実ですが、もし伝わらない場合は「ペーパー用より気持ち粗めで」とオーダーすると良いでしょう。
【産地】香りの「エチオピア」か安定の「ブレンド」か
サイフォンの最大の魅力の一つは、部屋中に広がる芳醇なアロマです。この「香り」を最大限に楽しむなら、産地選びにもこだわってみましょう。
香り重視の方に特におすすめなのが「エチオピア(モカ)」です。サイフォンは香りの成分を含んだコーヒーオイルを適度に通すため、エチオピア特有のフローラルでフルーティーな香りが爆発的に広がります。「紅茶のよう」と表現される華やかさは、サイフォンで淹れることでより一層際立ちます。
一方、毎朝飲むような「飽きのこない味」を求めるなら、「コロンビア」や「ブラジル」ベースのブレンドが鉄板です。これらはナッツやキャラメルのような香ばしさがあり、酸味も穏やか。サイフォンの高温抽出でも味が尖りにくく、非常に安定した一杯になります。
シングルオリジン(単一産地)は豆の個性がダイレクトに出るため、好みが分かれることもあります。初心者はまず、ショップが用意している「サイフォン用ブレンド」や「マイルドブレンド」から入ると、失敗が少なくおすすめです。
【鮮度】サイフォンこそ「焙煎後2週間以内」が命
サイフォンコーヒーを淹れる際、お湯が上がったロートに粉を入れた瞬間、「モコォッ!」と粉がドーム状に膨れ上がる光景を見たことはありますか? あれこそが新鮮な豆の証であり、サイフォンを淹れる醍醐味でもあります。
焙煎してから時間が経った古い豆(1ヶ月以上経過など)は、豆の中に含まれる炭酸ガスが抜けてしまっています。ガスが抜けた豆はお湯に入れても膨らまず、お湯と粉がうまく混ざり合わないため、スカスカした味になりがちです。特にサイフォンは「演出」も味のうち。視覚的な美しさと、鼻に抜けるアロマを楽しむためにも、焙煎後2週間以内、遅くとも1ヶ月以内の豆を選んでください。
スーパーに並んでいる賞味期限の長い豆よりも、地元の自家焙煎店や、焙煎日が明記されているネットショップで購入することを強くおすすめします。

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【量】1杯あたりの豆は何グラム?黄金比率を解説
「サイフォンだと豆の量は変えるべき?」という疑問もよく聞かれます。基本的にはドリップと同じ考え方で良いのですが、サイフォンは浸漬式のため、透過式のドリップに比べると濃度が出にくい傾向があります。
そのため、リッチな味に仕上げたいなら、「少し多め」に使うのがコツです。
| 杯数 | 水量の目安 | 豆の量(推奨) |
|---|---|---|
| 1杯分 | 160ml〜180ml | 15g〜16g |
| 2杯分 | 320ml〜360ml | 28g〜30g |
一般的なドリップが「1杯10g〜12g」と言われることが多いので、それよりも贅沢に使うイメージです。比率で覚えるなら、「お湯:豆 = 12:1」くらいが目安。ケチって豆を少なくすると、サイフォン特有のコクが出ず、単なる茶色いお湯のようになってしまうので注意しましょう。
【品種】クリアな味には「アラビカ種」がおすすめ
少しマニアックな話になりますが、豆の「品種」にも注目してみましょう。コーヒー豆には大きく分けて「アラビカ種」と「カネフォラ種(ロブスタ種)」があります。
サイフォンコーヒーには、断然「アラビカ種」がおすすめです。アラビカ種は風味豊かで酸味の質が良く、サイフォンのクリアな抽出に向いています。一方、缶コーヒーやインスタントによく使われるロブスタ種は、独特の麦茶のような香ばしさと強い苦味があり、高温のサイフォンで淹れると雑味が強調されすぎてしまうことがあります。
パッケージの裏面を見て「アラビカ豆100%」と書かれているものを選べば間違いありません。最近のスペシャルティコーヒーはほぼアラビカ種なので、専門店で買う場合はそこまで心配しなくても大丈夫ですよ。
出典:UCC上島珈琲株式会社 - コーヒー百科 アラビカ種とは
【目的別】サイフォンコーヒーの豆の選び方おすすめパターン&Q&A

【Project 369】

ここまで基本的な選び方を見てきましたが、「じゃあ具体的に、今の私にはどれがいいの?」という方のために、目的別のおすすめパターンを整理しました。
初心者におすすめの「酸味と苦味のバランスが良い豆」
「まだ自分の好みがわからない」「とりあえず失敗したくない」というサイフォンデビューの方には、以下のスペックが鉄板です。
- 豆の種類: バランス型のブレンド(「ハウスブレンド」「マイルドブレンド」など)
- 産地: ブラジル、コロンビア、グアテマラ
- 焙煎度: シティロースト(中深煎り)
この組み合わせは、酸味が穏やかで、ナッツやチョコレートのような甘いコクを感じられます。サイフォンで淹れると、角が取れてとろりとした質感になり、まさに「喫茶店のマスターが淹れてくれた味」に近づきます。
個性を楽しむ「スペシャルティコーヒー」と相性抜群
サイフォンに慣れてきて、「もっと豆の個性を感じたい!」と思ったら、ぜひスペシャルティコーヒーのシングルオリジンに挑戦してみてください。
サイフォンは、豆がお湯に浸かっている時間が一定のため、豆そのもののポテンシャルが隠さずに抽出されます。「この農園の豆はストロベリーのような香りがする」「こっちはジャスミンのようだ」といった、テロワール(土地の個性)の違いを利き分けるには、実はドリップよりもサイフォンの方が向いているとも言えるのです。
この場合、あえて「中煎り(ハイロースト)」を選び、攪拌(かくはん)を優しくすることで、紅茶のように透き通ったフレーバーティーのようなコーヒーを楽しむこともできます。これは新しい扉が開く体験ですよ。
豆のまま買うか粉で買うか?ミルなし派の対処法

サイフォンの高温抽出は、香りを一気に気化させます。粉の状態で購入すると、表面積が増えて酸化が進み、抽出時の香り成分がすでに飛んでしまっていることが多いのです。
しかし、「ミルを持っていない」という方もいるでしょう。その場合は、以下の対策をすればOKです。
- お店で挽いてもらう: 買うときに「サイフォン用(中挽き)」で挽いてもらう。
- 保存を徹底する: 挽いた粉は酸化スピードが早いため、密閉容器に入れて冷凍庫で保存する。
- 早めに飲み切る: 粉の場合は1週間〜10日以内で飲み切れる量(100gなど)だけこまめに買う。
これだけでも、スーパーで常温放置されている粉を買うより、格段に美味しいサイフォンコーヒーになります。
味が薄い・苦すぎる時の「選び方」以外のチェック点
良い豆を選んだはずなのに、なぜか美味しくない…。そんな時は、豆の選び方ではなく「淹れ方」の微調整が必要かもしれません。豆を変える前に、ここをチェックしてみてください。
- 挽き目が粗すぎる: 少し細かくしてみましょう。
- 攪拌(かくはん)不足: 最初に粉を入れた時、竹べらでしっかりお湯と粉を馴染ませていますか?
- 抽出時間が短い: 浸漬時間を10秒ほど延ばしてみましょう。
- 挽き目が細かすぎる: フィルターが目詰まりしている可能性があります。少し粗く挽きましょう。
- 抽出時間が長い: 1分以上浸していませんか? 加熱時間を少し短くしてみましょう。
- 火力が強すぎる: ボコボコ沸騰させすぎると雑味が出ます。お湯が上がったら弱火にするのがコツです。
まとめ:自分好みのサイフォンコーヒーの豆の選び方を見つけよう
サイフォンコーヒーの豆選びについて解説してきましたが、いかがでしたか?
最後に、サイフォン用の豆選びの「黄金ルール」をおさらいしましょう。
- 基本は「中煎り〜中深煎り」:高温抽出に負けないバランスの良さ。
- 挽き目は「中挽き」:グラニュー糖とザラメの中間くらい。
- 鮮度は「焙煎後2週間以内」:モコモコ膨らむ演出と香りを楽しむため。
- 量は「少し多め」:1杯15g〜16gでリッチな味わいに。
サイフォンは、理科の実験のようなワクワク感と、部屋中に広がるアロマ、そしてクリアでまろやかな味わいが楽しめる、最高の抽出器具です。ぜひ、今回ご紹介した選び方を参考に、あなたにとっての「運命の豆」を見つけて、素敵なコーヒータイムを過ごしてくださいね。
もし迷ったら、まずは近所の自家焙煎店で「サイフォンで淹れるので、酸っぱくなくてコクのある中深煎りのブレンドをください」とオーダーすることから始めてみましょう!

| 重視するポイント | おすすめ焙煎度 | おすすめ産地 |
|---|---|---|
| 失敗したくない・バランス | 中深煎り(シティ) | ブレンド、コロンビア |
| 香り・華やかさ | 中煎り(ハイ) | エチオピア、モカ |
| コク・甘み | 中深煎り(シティ) | ブラジル、マンデリン |
| すっきり・紅茶感覚 | 浅煎り〜中煎り | パナマ、コスタリカ |