



- 1回目の攪拌は「十文字切り」で粉をお湯に馴染ませる(味のベース)
- 2回目の攪拌は「円を描いて」ろ過をスムーズにする(整流)
- 抽出後の粉が「山型(ドーム)」になれば成功の証
サイフォンコーヒーの抽出において、「毎回味が変わってしまう」「お店のようなクリアな風味が出せない」と悩んでいませんか。
実は、その原因の多くは豆の種類や挽き目ではなく、抽出中の「攪拌(かくはん)」、つまり混ぜ方にあります。
サイフォンコーヒー攪拌の1回目と味を決める物理的理由を正しく理解し、実践することで、劇的に味が安定し、プロのような一杯に近づくことができます。

サイフォンコーヒー攪拌の1回目と味を決める物理的理由
攪拌の目的はお湯と粉の「飽和」と「ガス抜き」にある
サイフォンコーヒーにおける1回目の攪拌は、単に粉とお湯を物理的に混ぜ合わせるだけの作業ではありません。この工程には、科学的かつ物理的に明確な2つの重要な目的があります。
- 飽和(ほうわ):ロート内に上昇してきたお湯とコーヒー粉を素早く接触させ、粉の内部まで水分を均一に浸透させること。
- ガス抜き:新鮮な粉に含まれる炭酸ガスを放出し、お湯と粉が直接触れ合う環境を整えること。
粉の一部が乾いたままの状態でお湯に浸かっていると、成分が十分に抽出されない「未抽出」の部分と、過剰に抽出される部分が混在し、味に深刻なムラが出てしまいます。
1回目の攪拌は、いわば抽出のスイッチを入れるための重要な儀式なのです。
ベストなタイミングはお湯が上がりきった直後
1回目の攪拌を行うベストなタイミングは、ロートにお湯が上がりきった直後です。
ロートの底から伸びる鎖(ボールチェーン)から出る泡の状態を確認してください。大きな泡から「細かい連続した泡」に変わったタイミングが、お湯が上がりきり、温度が安定したサインです。
このタイミングを待たずに混ぜ始めると、温度が低すぎて抽出不足になるので注意が必要です。

【Project 369】
グルグル回さず「十文字切り」で味のベースを作る
ここで多くの人が間違いがちなのが、「スプーンでグルグルとかき回す」ことです。
1回目で強い遠心力をかけてしまうと、粉が外側に張り付いたり、微粉が舞い上がって雑味の原因になります。
正解は、竹べらを縦・横・縦・横と切るように動かす「十文字切り」です。
イメージとしては、「混ぜる」というよりも、粉をお湯の中に優しく「沈める・ほぐす」感覚です。これにより、余計な圧力をかけずに粉とお湯を馴染ませることができます。
3層構造ができるまで数回混ぜるのが正解
回数の目安は3回〜5回程度ですが、回数よりも「見た目」で判断しましょう。
理想的な攪拌が行われると、ロート内は上から順に以下の3層にきれいに分かれます。
- 上層:泡(アク・ガス)
- 中層:コーヒー粉(お湯に馴染んでいる)
- 下層:液体(クリアな抽出液)
竹べらでサッ、サッと数回ほぐし、この「3層構造」が見えたら、そこで直ちに攪拌をストップします。これ以上混ぜすぎると過抽出(雑味・エグみ)の原因になります。
サイフォンコーヒー攪拌の2回目とドームを作るコツ
2回目の目的は「抽出停止」と「ろ過の整流」
抽出時間の終わり(通常45秒〜1分後)に行う2回目の攪拌は、1回目とは全く目的が異なります。
それは「味を出す」ためではなく、「きれいに終わらせる(整える)」ための作業です。
そのまま火を消すと、粉が不規則に積もってろ過がスムーズに行われません。
攪拌によって液体の回転流を作り、粉を中心に集めることで、フィルターの目詰まりを防ぎ、スムーズなろ過を促します。
火を消すと同時に優しく円を描く
2回目の攪拌は、火を消すと同時、または直後に行います。
動作は1回目とは逆に、竹べらをロートの縁に沿わせて、大きく円を描くように「回す」動きです。
コツは「優しく」です。
強く回しすぎると、せっかく分離させた上層の雑味(泡)を巻き込んでしまいます。
2〜3周ほど優しく回し、穏やかな渦を作るだけで十分です。

【Project 369】
きれいなコーヒードームは成功の証
抽出が完了し、コーヒー液が全て下のフラスコに落ちた後、ロートの底に残った粉の形を観察してみてください。
これがきれいな山型、いわゆる「コーヒードーム」になっていれば、抽出成功の証です。
きれいなドームは、お湯が粉の層を偏りなく均一に通過したことを意味し、クリアで雑味のない味わいが実現されています。
弘法筆を選ばず?いいえ、プロは「竹べら」を使います
ここまで読んで、「スプーンじゃダメなの?」と思った方もいるでしょう。
結論から言うと、サイフォンには絶対に「竹べら」が必要です。
理由は3つあります。
- 温度を奪わない:金属スプーンは冷たいので、お湯の温度を下げてしまいます。
- ガラスを割らない:ロートは薄いガラス製です。金属が当たると簡単に割れます。
- 匂いがつかない:竹は清潔で、コーヒーの繊細な香りを邪魔しません。
まだ持っていない方は、数百円で買えるので必ず用意してください。これだけで味が安定します。
💡 バリスタの必需品:HARIO純正 竹べら
サイフォンメーカー純正の竹べらは、長さもしなり具合も計算され尽くしています。
「混ぜやすさ」が段違いなので、まだスプーンで混ぜている方はぜひ使ってみてください。
【上級者向け】究極の安定を求めるなら「フィルター」を変える
「攪拌は完璧なはずなのに、なんか雑味が消えない…」
そんな方は、布フィルター(ネル)の「煮沸不足」や「酸化臭」が原因かもしれません。
布の管理に自信がない方には、プロも愛用する「ペーパーフィルター用アダプター(F-103MN)」への交換を強くおすすめします。
これを使えば、毎回「新品の紙」で抽出できるため、布特有の匂いや詰まりから解放され、驚くほどクリアで安定した味になります。
💡 味を劇的に変える「魔法のパーツ」
サイフォンのろ過器をこれに変えるだけで、面倒な布の管理が不要になります。
「毎回同じ味が出せる」という点で、これ以上の投資対効果はありません。
(※HARIOのテクニカ・モカなど、ほぼ全てのハリオ製品に使えます)
まとめ:サイフォンコーヒー攪拌は再現性が命
サイフォン攪拌の極意まとめ
- 1回目:お湯が上がりきったら「十文字切り」で優しくほぐす(飽和)。
- 2回目:火を消したら「円を描いて」ドームを作る(整流)。
- 道具:必ず「竹べら」を使い、温度低下と破損を防ぐ。
- 確認:抽出後の粉がきれいなドーム型なら大成功!
最初は難しく感じるかもしれませんが、この「所作」さえ身につければ、サイフォンは誰よりも正直に、最高の一杯を返してくれます。
ぜひ、明日のコーヒータイムから実践してみてください。
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攪拌だけでなく、「抽出時間」や「器具の選び方」も味を左右します。
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