


- 「まずい」の正体は、細かすぎる挽き目による「微粉」と「過抽出」です。
- ペーパーフィルターでは隠れていた「豆の鮮度」がダイレクトに出る器具です。
- 「粗挽き」にして「4分待つ」ルールを守れば、誰でもプロ級の味になります。

【Project 369】
「フレンチプレスは簡単」とよく言われますが、実は「ごまかしが効かない」という側面も持っています。ペーパードリップなら紙が吸着してくれる雑味や油分も、フレンチプレスはすべてカップに注ぎ込んでしまうからです。
しかし、裏を返せば「正しい手順さえ踏めば、豆本来のポテンシャルを最も引き出せる器具」でもあります。今回は、多くの人が陥りがちな「まずい」と感じる5つの原因を徹底分析し、今日から実践できる劇的な改善テクニックを伝授します。
フレンチプレスが「まずい」と感じる5つの原因とは?粉っぽさや雑味の正体

【Project 369】
「フレンチプレスで淹れたコーヒーが美味しくない」と感じるとき、その不満の内容は大きく分けて「食感(口当たり)」と「味(フレーバー)」の2つに分類されます。具体的に何が起きているのか、原因を深掘りしていきましょう。
原因1:挽き方が細かすぎて「粉っぽい・ザラザラ」する
フレンチプレスに対するネガティブな評価で最も多いのが、「粉っぽい」「飲み終わった後のカップの底が泥のようになっている」というものです。口に含んだ瞬間にザラッとした砂のような感覚があると、どんなに良い香りがしても「まずい」と感じてしまいますよね。
この原因の9割は、「コーヒー豆の挽き方が細かすぎること」にあります。
スーパーなどで売られている「レギュラーコーヒー(粉)」の多くは、ペーパードリップ用に「中細挽き」に設定されています。しかし、フレンチプレスのフィルターは金属製のメッシュであり、ペーパーフィルターに比べて目が粗いのです。そのため、中細挽きの粉を使うと、フィルターの網目をすり抜けた大量の「微粉(びふん)」がカップに流れ込んでしまいます。
微粉は単に口当たりを悪くするだけではありません。微粉からは成分が過剰に抽出されやすいため、渋みやエグみの原因にもなります。「家にある粉を使ってみたけれど美味しくなかった」というケースの大半は、この挽き目のミスマッチが原因です。フレンチプレスには、ゴマ粒〜ザラメ糖くらいの大きさの「粗挽き」が必須条件なのです。
原因2:抽出時間が長すぎて「雑味・えぐみ」が出ている
「味が濃すぎる」「喉にイガイガするような刺激がある」。そんな風に感じる場合は、抽出時間が長すぎることが原因かもしれません。これを専門用語で「過抽出(オーバー・エクストラクション)」と呼びます。
フレンチプレスは、コーヒー粉をお湯に浸し続ける「浸漬式(しんし式)」という抽出方法をとります。お湯と粉が接触している間、成分はずっと溶け出し続けます。コーヒーの成分は、美味しい酸味や甘みが先に溶け出し、後から苦味や渋味、雑味といった重たい成分が溶け出す性質があります。
推奨されている「4分」を超えて放置してしまうと、本来抽出したくない「えぐみ」や「渋み」までお湯に移ってしまいます。また、抽出が終わった後にフレンチプレスのサーバーの中にコーヒー液を残したままにしておくと、粉とお湯が接触し続けているため、2杯目を飲む頃には恐ろしく苦くて渋い液体に変貌してしまいます。「もったいないから」といってサーバーに残しておくのは、美味しさを損なう大きな要因なのです。
原因3:豆の鮮度が悪く「酸化した味」になっている
「なんだか酸っぱいような、古い油のような味がする…」。もしそう感じたなら、それは器具のせいではなく、「豆の鮮度」の問題である可能性が高いです。
ここがフレンチプレスの怖いところでもあり、面白いところでもあるのですが、フレンチプレスは「豆の味を正直に出す」器具です。ペーパードリップの場合、ペーパーが酸化した油分や雑味の一部を吸着して濾し取ってくれるため、多少古い豆でも「それなりに」飲める味に整えてくれます。
しかし、金属フィルターのフレンチプレスにはその「補正機能」がありません。豆が古くて酸化していれば、その劣化した油分の味や、嫌な酸味がそのままダイレクトにカップに注がれます。「フレンチプレスはまずい」と感じる人の中には、実は「古い豆のまずさを、フレンチプレスが正確に伝えてしまっている」だけというケースが非常に多いのです。逆に言えば、新鮮な豆を使えば、そのフレッシュな風味を誰よりもダイレクトに味わえるということでもあります。
原因4:お湯の温度が不適切で「酸っぱい」または「苦い」
コーヒーの味は、お湯の温度によって劇的に変化します。ここもコントロールできていないと「まずい」と感じる原因になります。
- 温度が高すぎる(沸騰直後の100℃など): 苦味や雑味、渋み成分が一気に溶け出します。「苦くて飲めない」「舌がビリビリする」という場合は温度が高すぎる可能性があります。
- 温度が低すぎる(80℃以下など): 豆の成分が十分に溶け出さず、特に甘みやコクが出る前に抽出が終わってしまいます。結果として「酸っぱいだけ」「味が薄い」コーヒーになります。
特にフレンチプレスは4分間という時間をかけてゆっくり抽出するため、スタート時の温度管理が重要です。沸騰したてのお湯を注いでしまうと、雑味のオンパレードになりがちですし、逆にぬるいお湯では豆のポテンシャルを引き出せません。豆の焙煎度にもよりますが、一般的には90℃〜96℃あたりが適温とされています。
原因5:フレンチプレス特有の「オイル感」に慣れていない
最後は、技術的な失敗ではなく「好みの問題」です。フレンチプレスで淹れたコーヒーの表面には、キラキラと油が浮きます。これは「コーヒーオイル」と呼ばれるもので、コーヒー豆が持つ天然の油脂分です。
このオイルには、コーヒーのアロマ(香り)や滑らかな舌触り(マウスフィール)、甘みが詰まっています。スペシャルティコーヒーの世界では、このオイルこそが重要だと考えられています。
しかし、普段すっきりとしたペーパードリップや、クリアな味の缶コーヒーに慣れ親しんでいる人にとっては、このオイル感が「油っぽい」「重たい」「ぬるっとしている」と感じられ、「まずい」という評価につながることがあります。これは良し悪しではなく、特徴の違いです。もしあなたが「キレのあるクリアなコーヒー」が好みなら、フレンチプレスよりもペーパードリップの方が向いているかもしれません。ただ、この「とろみ」や「重厚感」こそがフレンチプレスの真骨頂であることは知っておいてください。
「まずい」を「美味しい」に変える!フレンチプレスの劇的改善テクニック

【Project 369】
原因がわかったところで、ここからは具体的な解決策、つまり「改善テクニック」をお伝えします。これらを実践するだけで、フレンチプレスの味は劇的に向上します。私も初めてこの方法で淹れたとき、「えっ、これが同じ豆!?」と驚きました。
対策1:ミルを「粗挽き」に設定して微粉を減らす
フレンチプレスで美味しく淹れるための「一丁目一番地」は、挽き目を「粗挽き」にすることです。
自宅にミル(グラインダー)がある方は、設定を一番粗いほうへ調整してください。目安は「ザラメ糖」や「岩塩」くらいの粒の大きさです。指でつまんだときに、ゴツゴツとした感触があるくらいがベストです。
もしお店で豆を挽いてもらって購入する場合は、必ず「フレンチプレス用でお願いします」と伝えるか、「一番粗く挽いてください」とオーダーしましょう。「ペーパー用」や「お任せ」にしてしまうと、細かすぎて失敗します。
また、どんなに高性能なミルでも、挽く過程でどうしても微粉は発生します。飲むときのテクニックとして、カップに注ぐ際に「最後の1〜2センチは注ぎ切らずに残す」のがポイントです。サーバーの底に溜まった微粉入りの液体をカップに入れないことで、口当たりが驚くほどクリアになります。
対策2:4分待つだけじゃない?正しい「抽出レシピ」を守る
「お湯を入れて適当に待つ」のではなく、プロのレシピを一度きっちり真似してみてください。基本の「4分」には理由があります。4分という時間は、粗挽きの粉の中心部までお湯が浸透し、美味しい成分がバランスよく溶け出すのに必要な時間なのです。
【基本のゴールデンレシピ】
- コーヒー豆:16g〜18g(粗挽き)
- お湯:300ml(90℃〜93℃)
- 抽出時間:4分
ポイントは、お湯を注ぎ終わった後にスプーンなどで軽く攪拌(かくはん)し、粉全体をお湯に馴染ませること。そしてタイマーをセットして4分待つこと。プランジャー(押し下げる棒)は、4分経つまで下げてはいけません。お湯の中で粉を自由に泳がせることで、ムラなく抽出できます。
より詳しい手順や、美味しく淹れるための細かな所作については、以下の記事で徹底解説しています。ぜひ参考にしてください。
関連記事:フレンチプレスの美味しい淹れ方|初心者に簡単な「4分抽出」のコツと微粉対策を解説
対策3:好みの味に合わせた「焙煎度」と豆選びを知る
先ほどお伝えした通り、フレンチプレスは豆の個性をダイレクトに表現します。つまり、「自分の好みに合った豆を選ぶこと」が、他の器具以上に重要になります。
例えば、フレンチプレス特有のオイル感やコクを楽しみたいなら、「深煎り(フレンチローストやイタリアンロースト)」の豆がおすすめです。チョコレートやナッツのような濃厚な風味と甘みが引き立ち、ミルクとの相性も抜群です。
逆に、豆本来のフルーツのような酸味や香りを味わいたいなら、「中煎り〜浅煎り」のスペシャルティコーヒーを選んでみてください。ペーパードリップでは紙に吸われてしまう香り成分(アロマオイル)まで楽しめるため、紅茶のように華やかな一杯になります。
豆の焙煎度による味の違いや、自分に合った豆の選び方については、こちらの記事で詳しくまとめています。
対策4:どうしても苦手な「酸味」を抑える淹れ方のコツ
「フレンチプレスで淹れると、どうしても酸っぱく感じるのが苦手…」という悩みもよく聞きます。フレンチプレスは低温になりやすかったり、粗挽きにする分、成分が出にくかったりするため、酸味が目立ちやすい傾向があります。
酸味を抑えてまろやかにしたい場合のテクニックとしては、以下の3つが有効です。
- お湯の温度を上げる: 95℃〜98℃くらいの高温で淹れると、苦味やコクが出やすくなり、酸味がマスキングされます。
- 抽出時間を少し延ばす: 4分ではなく、4分30秒〜5分待ってみてください。成分がしっかり溶け出し、酸味の角が取れてマイルドになります。
- 豆の量を増やす: お湯の量はそのままで、豆を少し多め(濃いめ)にすると、どっしりとした味わいになり酸味が気になりにくくなります。
それでも「酸っぱい!」と感じる場合は、そもそも豆が持つ酸味が強すぎる(浅煎りすぎる)か、他の原因があるかもしれません。酸っぱいコーヒーの原因と対策については、以下の記事で深掘りしています。
対策5:豆の劣化を防ぐ「保存容器」で美味しさをキープ
最後に、意外と見落としがちなのが「豆の保存」です。いくら良い豆を買ってきても、袋の口を開けっ放しにしていたり、高温多湿な場所に置いていたりすれば、豆は数日で酸化し、「まずいコーヒー」の原料になってしまいます。
特にフレンチプレスは豆の鮮度をごまかせない器具ですから、保存状態は味に直結します。酸化を防ぐためには、「光・空気・湿気」を遮断できる密閉容器(キャニスター)に入れるのが鉄則です。
おしゃれで機能的な保存容器を使うと、キッチンに立つのが楽しくなるだけでなく、コーヒーの美味しさも長持ちします。おすすめの保存容器や選び方はこちらをご覧ください。
関連記事:おしゃれ陶器のコーヒー豆保存容器【選び方とおすすめ】
まとめ:フレンチプレスはまずくない!特徴を理解してプロの味へ
今回は、フレンチプレスが「まずい」と言われてしまう原因と、それを解決する具体的な方法について解説しました。
フレンチプレスは、豆の個性を丸ごと受け止める「正直な器具」です。粉っぽさや過抽出といったネガティブな要素を取り除いてあげれば、自宅でも驚くほど豊かで奥深いコーヒーを楽しむことができます。「まずい」と感じて棚の奥にしまってしまったフレンチプレスがあれば、ぜひ今回のテクニックを使ってもう一度だけチャンスをあげてください。きっと、前回とは別物の美味しい一杯に出会えるはずです。
最後に、今回のポイントをまとめました。
【保存版】フレンチプレス 美味しさのポイントまとめ
🚫 まずい原因の根本
器具のせいではなく「使い方」と「豆」にあります。
🫘 Step 1: 豆の準備(鮮度と挽き方)
- 鮮度が命!古い豆は使わない(ダイレクトに味に出るため)。
- 挽き方は必ず「粗挽き」で!(中細挽きは絶対NG)。
- 保存は密閉キャニスターで酸化を防ぐ。
⏱️ Step 2: 抽出の鉄則(時間とレシピ)
- まずは基本レシピ(豆16g:湯300ml)から試す。
- 抽出時間は「4分」が基準。長く放置しすぎない。
- Hint: 酸味が苦手なら「湯温高め」か「深煎り」を選ぶ。
☕ Step 3: 注ぎと仕上げ(微粉と後片付け)
- 微粉対策:カップに注ぐときは「最後の一滴」まで注がない。
- 過抽出防止:サーバーにコーヒー液を残したままにしない。
- お手入れ:フィルターをしっかり洗浄し、酸化した油を残さない。
✨ 結論
正しい手順で淹れれば、ペーパーにはない「オイル感」と「まろやかさ」を楽しめます。
フレンチプレスを使いこなして、コーヒーライフの幅をグッと広げましょう!🚀